妊婦が飲むべき葉酸の摂取量は?厚生労働省が推奨する葉酸の飲み方・選び方

助産師

この記事を読むと、
葉酸とはどんなもの?
葉酸はどうやって摂取するべき?
葉酸の摂取量は?
サプリでの葉酸摂取はどうしたらいい?

の疑問がすっきりしますよ!

妊娠中はどうして葉酸が必要なの?

助産師

葉酸は、ビタミンB群の水溶性ビタミンのひとつです。葉酸にはDNAを正確に作り、修正する働きがあります。妊娠中、胎児の身体では細胞分裂が盛んに行われています。そのため葉酸が不足すると、間違った遺伝情報をもつ細胞が作られてしまうことがあるのです!

そんなときに葉酸が不足すると、赤ちゃんの「神経管閉鎖障害」のリスクが高くなってしまうので、注意しましょう。また葉酸やビタミンB12が不足すると、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になる可能性があります。

神経管閉鎖障害とはどういうもの?


神経管閉鎖障害は、脳や脊椎の先天性異常です。脳や脊髄の元となる神経管が塞がることによって、脳や脊髄の機能に異常がでてしまうのです。神経管が塞がる場所によって二分脊椎症と無脳症にわけられます。

二分脊椎症の場合、歩行障害、運動障害のほか、排尿・排便障害、性機能障害などが起こります。潜在型の場合は、大人になってから判明することもあります。

無脳症の場合は脳が正常に作られないため、残念ながら出産後赤ちゃんが生きていくことはできません。脳以外には異常がないことが多く、お腹の中にいる間は成長します。
妊娠14週頃には判明することが多く、普通分娩をすることはできますが、妊娠の継続を断念する方が多いのが現状です。

助産師

葉酸を摂取すると、神経管閉鎖障害のリスクを70~80%減らすことができるとの研究結果がありますので、お母さんが葉酸を摂ることでリスク回避することもできますよ。
遺伝や環境が原因の場合があるので完全に防ぐことはできませんが、妊娠中に赤ちゃんのためにできることもあるのですね。

厚生労働省は、いつからいつまで葉酸を摂取することを推奨している?


助産師

厚生労働省は、妊娠する1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までのあいだ、葉酸を摂取することを推奨しています。赤ちゃんの細胞分裂が盛んな妊娠初期に葉酸を摂ることで、神経管閉鎖障害のリスクを軽減することができますよ。

ただ食品から摂れる葉酸は、どの程度身体に吸収されているのか、はっきりとわかっていません。また、妊娠中に必要な葉酸を食事のみから摂取することが難しい場合も多いので、サプリメントからの摂取が推奨されています。
妊娠を計画している、あるいは妊娠している可能性がある人は、葉酸を摂取するように心がけるとよいですね。

妊娠中期以降も、葉酸は必要なの?

厚生労働省が葉酸の摂取を推奨しているのは、妊娠前から妊娠初期にかけての期間ですが、妊娠中期以降も継続して葉酸を摂るように心がけましょう。妊娠中は、貧血症状に悩まされる人が多いですよね。貧血というと鉄分が不足することで起こるイメージがありますが、葉酸不足も貧血の原因のひとつなんですよ。

助産師

葉酸やビタミンB12には造血作用があり、葉酸が不足すると赤血球が正常に作られず「巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)」を引き起こしてしまいます。妊娠中はビタミン類も不足してしまいがちなので、妊娠中期以降も積極的に葉酸を摂取して、貧血を予防しましょう。

葉酸が多く含まれている食材は?


葉酸を多く含む食材にはこのような物があります。どれも日常的に取り入れやすいものですね。

  • 焼きのり 1食(3g)あたり約60μg
  • 納豆 1パックあたり約60μg
  • モロヘイヤ 100gあたり250μg
  • ほうれん草 生の状態で100gあたり210μg
  • いちご 100gあたり90μg

レバーにも100gあたり140μgの葉酸が含まれていますが、レチノールというビタミンAも多く含まれています。ビタミンAは過剰摂取すると、赤ちゃんの奇形を引き起こしてしまう可能性があります。そのため、妊娠中の過剰摂取は避けるようにしましょう。

葉酸は食事で摂るべき?サプリメントで摂るべき?

葉酸は水に溶ける性質がある上、加熱すると半分以上が流れでてしまうので注意が必要です。ほうれん草の場合、生の状態なら100gあたり210μgの葉酸が含まれていますが、茹でた後は約半分の110μgとなってしまいます。そのため、食事で必要な量の葉酸を摂るのは難しいですね。

助産師

とくに妊娠初期のつわりの時期は、食事がままならない妊婦さんも少なくありません。サプリメントなら手軽に葉酸を摂取することができるため、厚生労働省もサプリメントからの葉酸摂取を推奨しています。

葉酸の種類によって吸収率が違う?

助産師

葉酸には、「天然葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)」と「合成葉酸(モノグルタミン酸型葉酸)」の2種類があります。天然葉酸のほうが身体によさそうに聞こえますが、厚生労働省が推奨しているのは、合成葉酸のほうなのです!

身体に吸収された栄養が使われる割合を、生体利用率といいます。天然葉酸はその生体利用率が50%程度ですが、合成葉酸の場合は約85%というのだから驚きですね。また、実は赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぐ効果があると認められているのは、合成葉酸だけです。


ただ科学的な根拠が足りないだけで、天然葉酸を摂取しても無駄だというわけではありません。可能な限り、食事からも葉酸をしっかりと摂取するようにしましょう。

妊娠中・授乳中の1日の葉酸の摂取量は?

妊娠中・授乳中は葉酸を摂取するべきだというけれど、どの程度摂ればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか?
だいたいの目安として、次のような数字が厚生労働省から提示されています。

<厚生労働省が推奨している天然葉酸の1日の摂取量>

  • 18歳以上の成人男女 240μg
  • 妊婦 480μg
  • 授乳婦 340μg

※1μg(マイクログラム)=0.001g

助産師

ただこちらは、食事から摂ることができる天然葉酸の摂取症の目安です。妊娠を望んでいる女性や妊娠している可能性がある女性は、これとは別に1日に400μgの合成葉酸を摂取するようにしましょう。赤ちゃんの先天性異常を予防する効果が立証されているのは、合成葉酸のほうです。

そのため、つわり中など、食事を十分にとることが難しい場合でも、サプリメントから葉酸を摂取するようにしてくださいね。

葉酸を過剰摂取するとどうなる?摂取量の上限は?

妊娠中に欠かせない葉酸ですが、過剰摂取すると「葉酸過敏症」になってしまうことがあります。

<葉酸過敏症の症状>

  • 発熱
  • じんましん
  • 呼吸障害

また葉酸を摂りすぎてしまうと、ビタミンB12欠乏症の発見が遅れてしまうことがあります。ビタミンB12や葉酸が不足すると巨赤芽球貧血になりますが、ビタミンB12欠乏症が原因の場合、足のしびれなどの神経症状も起こります。

しかし葉酸を過剰摂取していると貧血症状は改善され、神経症状のみ起こっている状態になるのです。そのため、ビタミンB12欠乏症と診断することが難しくなってしまいますよ。

<1日の葉酸の摂取量の上限>

  • ~29歳 900μg
  • 30歳~ 1000μg

助産師

食事で過剰摂取をしてしまうことはほとんどありません。しかしサプリメントの場合は、少量で多くの葉酸を摂ることができるので、用量をきちんと守ることが大切です。

葉酸のサプリメントを服用する時期は?

助産師

葉酸のサプリメントは、妊娠の1ヶ月以上前から服用することが推奨されています。そのため、妊娠を望んでいる人はサプリメントの服用を始めるようにしましょう。また妊娠中期から授乳しているあいだも、葉酸が不足してしまいがちなので服用を続けることをおすすめします。

葉酸は、実は不妊治療にも効果があるんですよ。子宮内膜を強化して着床しやすくしたり、受精卵の成長をサポートしたりしてくれます。また精子異常を防ぐ効果もあるので、パートナーといっしょに、サプリメントを飲んでみてはいかがでしょうか。

葉酸と合わせて摂取したい栄養素は?こちらもサプリメントを活用するべき?

妊娠中は、赤ちゃんに鉄分を送ることが優先されるため、鉄欠乏性貧血になってしまう人も少なくありません。貧血が悪化すると、赤ちゃんに影響がでてしまうこともあります。また立ちくらみなどによる転倒にも、注意が必要です。

またカルシウムも、妊娠していないときの1.5倍ほど摂取するようにしましょう。身体の中
のカルシウムが不足すると、母体の骨から補うようになるため、産後「骨粗しょう症」になってしまうことがあります。

助産師

鉄分やカルシウムも、葉酸と同じように食事のみで摂取するのは難しいですよね?そのため、サプリメントを活用することをおすすめします。葉酸サプリメントに、鉄分やカルシウムが配合されているものもあるので、そちらを利用するのもおすすめですよ。

ただサプリメントさえ飲んでいれば、食事をおろそかにしてもよいというわけではありません。バランスのよい食事を心がけたうえで、サプリメントで必要な栄養を補いましょう