うつ病だけど妊娠出産できるの?これから妊娠出産を考えているあなたへ〜元精神科看護師からのアドバイス〜

うつ病で治療中だけど、そろそろ子どもが欲しいと考えている方もいらっしゃると思います。

でも、うつ病が完治していない状態での妊娠出産が子供へ与える影響は大丈夫なのか?内服は続けるのか?中断しなければならないのか?そもそも自分が出産育児を乗り越えていけるのか?…悩みは尽きないですよね。

今回は、うつ病をお持ちのこれから妊娠出産を考えている方のお悩みについてお答えしたいと思います。ぜひ、参考にしてくださいね。

うつ病だけどこれから妊娠出産できる?抗うつ剤などの内服はどうしたらいい?

「夫と相談した結果」「年齢的なことを考えて」など、妊娠出産を考えるきっかけは、さまざまだと思います。

うつ病の治療を受けている方は、妊娠出産を希望しながらも、本当に大丈夫なのか先の不安でいっぱいだと思います。実際に多くの方がこのような心配をされています。

  • 妊娠中のうつ病の治療はどうなるの?
  • うつ病の薬をやめなければならない?
  • 内服を続ける場合、赤ちゃんに異常が現れることはないの?
  • 妊娠出産でうつ病が悪化したらどうする?
  • そもそも自分に、妊娠出産、育児ができるの?

私が以前勤めていた病院では、うつ病の薬を内服しながら妊娠出産した方は多くいらっしゃいます。みなさん、病気とうまく付き合いながら、素敵なママになっていらっしゃいますよ。

もちろん病状にもよりますが、うつ病だからと子どもは無理だと最初からあきらめる必要はないのです。妊娠を考え始めたときから、あなたと医療チームとの二人三脚が始まります。

1.まずは妊娠に向けて医師と十分な相談をしよう

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妊娠出産を考えるとき、まずは主治医の先生に相談して今の状態で妊娠出産が可能か確かめる必要があります。

妊娠出産を考えるということは、現在のあなたの精神状態は落ち着いていらっしゃるのだろうと、お見受けします。しかし正確な病状を知ることが、これからの妊娠出産を心穏やかに乗り越えられるのか、出産後の育児も無理なくできそうか判断する材料になります。

妊娠出産が可能な状態だと診断されれば、妊娠に向け、薬の調整の必要がでてくるかもしれません。ママのためにも赤ちゃんを育むためにも、内服薬をより副作用の少ないものへと変更する可能性があります。

妊娠出産という人生の中の一大イベントを決心なさるのですから、しっかり準備して万全の態勢で臨みたいですよね?主治医の先生とよく相談して、あなたが納得いく形での治療を続けながら、妊娠出産を目指しましょう。

2.SSRI・SNRIや三環系・四環系抗うつ剤の一般的に言われている胎児への影響

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妊娠出産に向けての一番の心配が「内服を続けることでの赤ちゃんへの影響」ではないかと思います。実際、私が勤務していたときに、妊娠希望のうつ病の患者さんから聞く悩みのNO.1でした。

多くの方たちが誤解していることが、「妊娠したら絶対薬をやめなければならない」ということ「抗うつ剤はおなかの赤ちゃんの形態異常や障害の原因になる」ということです。

抗うつ剤の勝手な中止などの自分自身での判断は危険です

妊娠に向けて、あなたの状態によっては主治医の先生から一時休薬しましょうとの指示がでるかもしれませんし、内服を続けましょうとの指示があるかもしれません。確かに内服していない状態の方が望ましいですが、妊娠出産のためには必ず内服を中断しなければならないというものではありません。

逆に、自己判断などで急に内服を中断してしまったことでのママの病状悪化の方がもっと怖いのです。おなかの赤ちゃんを育てるママが元気で健康でないと、赤ちゃんとママ共倒れになってしまいます。

SSRI、SNRI、NaSSAの妊娠期における胎児への影響とは

うつ病の治療に使われている、パキシル、デプロメール、ジェイゾロフト、トレドミン、リフレックス(SSRI,SNRI,NaSSAと呼ばれるグループのお薬です)の妊娠期における赤ちゃんへの影響について、研究は多くなされています。特にアメリカでは、妊婦の約6%がSSRIを内服していたとの報告があるぐらい SSRIは諸外国ではメジャーなお薬です。

今のところ薬以外での治療が難しいうつ病の場合は、ママにSSRIなどのお薬を使用して精神の安定を図ります。ママの精神安定が赤ちゃんに与えるよい影響は、薬の使用による赤ちゃんへの危険性を上回ると考えられています。

スウェーデンのパキシル内服による報告とは?

ただし最近のスウェーデンの研究によると、パキシル内服による心奇形発生率が高くなるとの報告がなされていますので、妊娠中の内服は避けた方が無難です。

三環系抗うつ剤・四環系抗うつ剤の取り扱いとは

三環系抗うつ剤(アナフラニール、トフラニール、トリプタノール、アモキサンなど)や、四環系抗うつ剤(テトラミド、テシプール、ルジオミールなど)については、どうでしょうか?スウェーデンの研究によると妊娠初期にアナフラニールを使用することでの心室・心房中隔欠損のリスクが高まるとの報告がありますので、妊婦さんへの処方は避ける傾向があります。

主治医は副作用も加味してベストな選択をしています

もちろん、こちらでお伝えした情報はすでに主治医の先生も十分に分かっているものです。妊娠を希望する上で内服を続けてくださいとのお話があった場合、今飲んでいるお薬が副作用の心配があるものでしたら他のものに変更する、認知行動療法など他の治療法を導入する等の対応がなされるはず。妊娠出産に向けてお薬の心配がある場合は、遠慮せずに主治医の先生や医療チームのスタッフに相談してくださいね。

妊娠と薬情報センターに副作用の相談をすることも可能

もっと詳しく妊娠とお薬の副作用について相談したいという場合がありましたら、「妊娠と薬情報センター」に相談することもできます。相談にあたっては、以下の3つの方法があります。

  • 医師に相談依頼書を書いてもらって主治医のもとで相談する方法
  • 「妊娠と薬外来」が設置してある指定病院に受診して相談する方法
  • 事前に問診票を送って予約後に電話相談する方法

3.うつ病を持つ妊婦は出産までどう過ごしたらいいの?

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うつ病を持っているからと妊娠中は何か制限されるということはありません。普通の妊婦さんと変わりはないですよ。まずは、“無理をしない”をモットーに、今しかないマタニティライフを楽しんでくださいね。

4.出産後のサポート体制を考えておく

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普通の状態でも妊娠出産は大変なもの。出産後の育児でなかなか休めない日々も続きます。うつ病を持っていると、出産後に体調を崩してしまい、思い通りに育児ができなくなる可能性も考えられます。

今のうちから、出産後に育児を手伝ってもらえよう家族にお願いしておきましょう。家族の協力が得られない場合は地域のファミリーサポートなどにあらかじめ連絡をしておくことが大事です。赤ちゃんのお世話や家事など、ママが全部をしなければならない、ということはないですよ。手伝ってもらえることは手伝ってもらって、ママも十分休める時間をとってくださいね。

5.医療チームとの連携

うつ病のママが妊娠すると、産婦人科と精神科の連携が重要になってきます。産婦人科の先生には、精神科にかかっていること、内服の内容についてなどをお話ししてください。

産婦人科は、おなかの赤ちゃんの健康とママの妊娠出産のプロセスが安心安全にできるようフォローをし、精神科はママの精神状態が穏やかに落ち着いて過ごせるようフォローします。どれか一つ欠けても妊娠出産がスムーズにいかなくなる可能性があります。

もし、妊娠中に精神状態が悪化した場合、赤ちゃんへの影響も考えて妊娠前のようには積極的に薬物治療ができないことが考えられます。必要によっては病院へ入院して治療を受ける場合もあるかもしれません。その場合も、産婦人科と連携してママと赤ちゃんの健康状態をしっかりと見ていきます。実際、以前の勤務先にはそういった妊婦さんの入院が多かったです。みなさん無事に出産をされていますので安心してくださいね。

何にせよ、こういった連携対応ができるのは妊娠中のママが精神科と産婦人科に定期的にしっかり受診していることが前提です。自己判断で受診をやめるということはしないで、定期的な受診を心がけてくださいね。

6.出産後の産後うつ病を予防するために

出産後はホルモンの関係もあり、普通よりも精神的に不安定になりやすい時期でもあります。ましてやうつ病をお持ちであればそのリスクは十分に考えられます。

これは、今まで精神科に勤務してきた私の主観になってしまうのですが、うつ病をお持ちのママたちはどうも一人で一生懸命頑張ろうとしてしまう傾向にあると思います。特にうつ病が悪化状態にあると病気のために判断力も落ちてきてしまいます。気持ちに余裕がなくなり、がんじがらめになって、自分はダメな人間だと責めてしまうようです。

誰でも最初から完璧なママはいません。うまくできなくても、動けなくても大丈夫ですよ。それよりもどんどん周りに助けを求めることが、何よりも重要だと思います。つらいときは、パパや身近な家族に手伝ってもらい、つらい気持ちは主治医の先生や医療スタッフにお話ししてくださいね。何かしら、あなたを手助けできる手段が見つかりますよ。
参考:妊娠と薬情報センター

まとめ

うつ病を持ちながらの初めての妊娠出産というのは、不安がいっぱいですよね? でも主治医の先生との連携をしっかりして、一緒に今後の治療計画を考えながら行えば十分に可能です。

もちろん妊娠出産のためには、ママの状態がある程度落ち着いていることが前提です。主治医の先生と相談しながら、治療はしっかりと受けてくださいね。あなたの腕にかわいい赤ちゃんを抱っこできる、その日が待ちどおしいですね。