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つわりと妊娠悪阻の症状はどう違うの?
妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、つわりが重症化してしまった状態を指します。
広く知られているように、つわりでは吐き気や嘔吐といった症状がみられます。辛い症状ではあるものの、栄養や水分は摂取でき、全身状態に問題はないため治療の必要はありません。
一方、妊娠悪阻では、吐き気が強くて飲食物摂取ができなかったり、胃液や血液の混じった嘔吐が続いたりと、症状も重くなります。その影響で、治療が必要なほど全身状態が悪化してしまうと「妊娠悪阻」と診断され、病気として扱われます。
妊娠悪阻かもしれない?
助産師
妊娠悪阻は、脱水症状を中心とした初期段階から始まり、段階的に悪化する毎にさまざまな症状がでてきます。もし以下に当てはまる症状があれば、妊娠悪阻である可能性がありますので、注意が必要です。
- 吐き気や嘔吐がひどく、日常生活を送れない
- 飲食物を摂取できない
- 体重減少、めまい、口の乾きなど、全身的な症状がある
妊娠悪阻の初期に起こりやすいこと
妊娠悪阻の初期段階では、以下のような症状がみられます。
- 一日中気分が悪い(悪心・吐き気)
- 一日に5回以上吐いてしまう
- 吐き気がひどく、飲食物を受けつけない(食べても吐いてしまう)
- 胃液や血液を吐いてしまう
- 体重が1週間で5%以上減ってしまう(50kgなら2.5kg以上)
- 口の中が乾いたり、皮膚がカサカサしてくる(脱水状態)
- 尿の回数や量が減る
- だるさ、めまいを感じる
吐き気や嘔吐で栄養と水分が体内に不足してしまうため、脱水症状になったり、体重が減少してくるのです。
妊娠悪阻の中期に起こりやすいこと
妊娠悪阻が進むと、初期症状に加えて尿中にケトン体という物質がでるようになります。
ケトン体とは肝臓が脂肪を分解するときに作られる物質です。人間の体は、食事からエネルギーを得ている間は体内の脂肪を分解する必要はなく、ケトン体も尿中にでることはありません。
しかし食事から栄養が取れなくなると、体内の脂肪を使って生命維持に必要なエネルギーを作り始めます。すると、ケトン体が尿中に検出されるようになるのです。
助産師
妊娠悪阻が重度のときは?
妊娠悪阻を発症しても治療せずにいると、症状がどんどん重症化してきます。
重症の妊娠悪阻では、初期や中期の症状に加えて、めまい、視力障害、不眠、昏睡、幻覚などの脳神経症状がみられるようになります。
また、栄養を取れないことでビタミンB1が不足し、お母さん自身がウェルニッケ脳症と呼ばれる病気を発症する場合もあります。ウェルニッケ脳症では、眼球運動障害や意識障害、失調性歩行(歩くとふらふらしてしまう)などの症状があらわれ、後遺症が残る例もあります。
助産師
妊娠悪阻にはどんな人がなりやすいの?
妊娠悪阻は、妊婦全体の約0.1%に発生するといわれています。つわりは妊婦全体の50%~80%に発生するといわれており、経験のある経産婦の方も多いと思います。しかし妊娠悪阻となると、身の回りに経験者がいないという場合も多いのではないでしょうか。
助産師
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なぜ初産だと妊娠悪阻になりやすいの?
妊娠悪阻は、医学的にも経産婦より初産婦の方が発生頻度が高いといわれています。それは一体なぜなのでしょうか。
つわり・妊娠悪阻は、急激なホルモンバランスの変化や、妊娠による環境変化への不適応によって起こります。
助産師
そのため、初産婦はつわりの症状も重くなりやすく、妊娠悪阻になる頻度が高いという訳ですね。
多胎妊娠中に妊娠悪阻になりやすいわけは?
つわり・妊娠悪阻の原因とされる物質として、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンがあります。このホルモンは、妊娠を継続させ、子宮内膜を妊娠に適した状態に保つために分泌されます。
助産師
異常妊娠と妊娠悪阻の関係は?
初産・多胎妊娠の他にも、妊娠悪阻になりやすいと言われているのが胞状奇胎などの異常妊娠時です。
前述のように、妊娠するとhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。胞状奇胎などの異常妊娠の場合も、もちろんそのホルモンは分泌されます。
そして多胎妊娠時と同様、異常妊娠の場合はhCGの分泌量が正常妊娠時よりも増えることが知られています。
助産師
妊娠悪阻が起こりやすい時期とは?平均期間は?
妊娠悪阻はつわりが重症化した状態であるため、つわりと同じような時期に発生します。
助産師
ただ、つわりの期間=妊娠悪阻の期間、という訳ではありません。つわりが徐々に悪化して妊娠悪阻になるパターンが多いため、たいていはつわりの期間>妊娠悪阻の期間、となります。
また、つわりと同様、妊娠悪阻でも大きな個人差が見られます。入院治療するような場合でも、数日間で退院できる人もいれば、一ヶ月以上の入院を余儀なくされる人もいます。
もしかして妊娠悪阻かもと思ったら
つわりで心身ともに辛いけれど、「まだ我慢できる」とか「きっとみんな同じくらい辛いはず」という風に考えていませんか?
あるいは、親や周囲に「つわりは病気じゃない」などと言われて病院にかかるのを躊躇している方もいるかもしれませんね。
確かに「つわり」は病気ではありませんが、重症になって「妊娠悪阻」の段階に入ったものはれっきとした病気です。
適切な治療が必要ですし、放置していると症状がどんどん悪化し、命の危険がでてきてしまうこともありますよ。
助産師
病院を受診するタイミングは?
いざ病院を受診するとなると、「これは本当に受診するほどの症状かな?」と不安になる事もあるかもしれませんね。
そんな時は、以下の症状にあてはまるものがないか確認してみてください。
- 一日ずっと吐き気が続く
- 一日5回以上の嘔吐がある
- 飲食物を口にできない(食べたり飲んだりすると吐いてしまう)
- 体重が1週間で5%以上減ってしまう(50kgなら2.5kg以上)
- 尿の量や回数が減っている
- めまい、ふらつきがある
- 口の中が乾く、皮膚がカサカサする
助産師
赤ちゃんにはどんな影響があるの?
妊娠悪阻で栄養が取れないと、「お腹の赤ちゃんはちゃんと育つのかしら?」と心配になってしまいますよね。
助産師
これまでの症例や研究でも、妊娠悪阻による赤ちゃんへの目立った悪影響はなく、死産や流産などのトラブルの割合も増加することはないとされています。
気をつけるべき症状は?
妊娠悪阻は、重症化する前にきちんと治療を受けていれば赤ちゃんへの影響はそこまで心配する必要はありません。
しかし、やはり重度の脱水症状や飢餓状態が長期に渡ってしまえば、胎児にも低体重などが見られるケースもでてきます。
また、脱水状態や飢餓状態は、重度になればそれだけでも母体の命を危険にさらしてしまいます。
助産師
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